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良質な初乳を与えよう!

根室南部事業センター 第二家畜診療課
獣医師 興梠 一成

〇初乳の重要性
 新生子牛の疾病に対する免疫は、初乳の摂取に依存しており、初乳管理は新生子牛の生存とその後の健康に大きな影響を与えます。初乳摂取が不十分な子牛は受動免疫不全(Failure of Passive Transfer:FPT)となり、疾病発生率や死亡率が高いことが報告されています。

〇初乳管理の3Q
(Quick, Quality, Quantity)
 子牛の初乳給与の基本は、IgG(免疫グロブリン)の吸収率の高い出生直後に良質な初乳を十分量与えることです。初乳給与のタイミングと量の基本は、出生後6時間以内に3L以上(体重の8%以上)とされています。
 出生後、消化管内に羊水が溜まっていると哺乳欲がでません。溜まっている羊水はIgG吸収能を低下させます。そのため、4時間以内であれば、子牛の哺乳欲がでてきてから与えることが推奨されています。また、母牛に子牛を舐めさせることもIgG吸収を高めることにつながります。


〇なぜ初乳中のIgGが減ってしまうのか?
① 漏乳
 IgGの比重は重く、乳房の下に溜まるため、漏乳により先に流れ出てしまいます。漏乳の原因は乳頭括約筋の緩みで、低カルシウム血症の一症状です。漏乳を防ぐには低カルシウム血症予防が大切です。
② 短すぎる乾乳期間
 乾乳期間が非常に短い場合は初乳の品質が低下します。初乳中の抗体は、母牛の血液から乳腺細胞を介して初乳中に移行します。この移行は分娩前5週間前から始まり、最後の2週間で最大となります。そのため40日以上の乾乳期間を推奨しています。
③ 初回搾乳の遅れ
 上記のようにIgGの産生は分娩前から始まり、分娩を境に低下していきます。初回搾乳までの時間が長くなると乳量は増えますが、初乳は希釈されてしまいます。そのため分娩後2時間以内に初回搾乳を行うことを推奨しています。

〇良質初乳の判断方法
 良質な初乳の基準はIgG50g/L以上とされていますが、IgG濃度を現場で測定することは現実的ではありません。そのため、Brix 計により代用する方法が普及しています。IgG濃度とBrix 値(※)には正の相関があり、Brix 値20%以上が良質と判断されます。


※「Brix 値」とは、糖度計で示される純粋な糖度ではなく、「溶液中のIgG など(=可溶性固形分)の割合(%)」を示したもの

Brix測定器

 

〇初乳が基準値未満の場合
① 別の母牛の良質な冷凍初乳を使用する
② 初乳製剤を母牛の初乳に足す
③ 初乳製剤に切り替える
 状況に応じて使い分けていきましょう。

 

〇おわりに
 預託施設や哺乳期における群飼養が普及するにつれて、感染症に対する予防管理がより重要となっています。初乳管理は哺育管理の一部分ですが、重要なポイントです。改善の必要がある場合にはできる部分から取り入れていきましょう。

 


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