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牛伝染性リンパ腫の発生を防ぎましょう

釧路東部事業センター 浜中家畜診療所
獣医師 樋口 真

〇牛伝染性リンパ種はどんな病気?
 「牛伝染性リンパ腫」とは以前までは「牛白血病」と呼ばれていた病気のことです。
 令和2年に「牛白血病」から「牛伝染性リンパ腫」に呼び方が変わりました。
 牛伝染性リンパ腫は牛の血液中にある白血球が癌のようになり、通常よりも大量に増えたり、リンパ節が腫れる病気です。牛から牛に伝染する病気で、牛から人に感染することはありません。

〇どうやって感染するの?
 牛伝染性リンパ腫ウイルス(bovine leukemia virus:BLV)の感染が原因です。このウイルスは、血液や牛乳を介して簡単に伝染していきます。
 感染していく経路としては全部で5つのパターンが考えられます。
1 感染している牛から他の牛への感染方法
① アブやブユなどの血を吸う虫が感染した牛を刺した後、他の牛を刺すことによる感染
② 感染した牛に輸血や除角など出血する処置をした後、そのまま他の牛を扱うことによる感染
③ 感染した牛の血液や分泌物に触れた注射の針や直検手袋などを、再度他の牛に使用することによる感染
2 母牛から子牛への感染
① 感染した牛の乳汁を子牛に飲ませることによる感染
② 感染牛の子宮内や産道での胎子への感染

 

 

〇どんな症状が出るの?
 目立つ症状としては全身性のリンパ節の腫れがあります。体の表面から触れるリンパ節や、直腸検査で触れる腹腔内のリンパ節が異常に大きく腫れることなどにより診断することができます。胸やお腹の中のリンパ節が腫脹することで心臓や肺が正常に働きにくくなったり、水のような下痢がみられることもあります。また、眼の奥のリンパ節が腫れると眼が押し出され、眼が飛び出たように見えることもあります。

 他にみられる症状としてはエサ食いが悪い、痩せてくる、牛乳が出ないなどがあります。
 発症牛は症状がよくなる見込みは薄く死亡する可能性が高いです。
 ウイルスが感染してすぐに症状が出るわけではなく、数年は症状が出ません。感染した牛のうち約30%が持続性リンパ球増多症といわれる病気となり、最終的に感染した牛のうち2~5%が牛伝染性リンパ腫を発症します。持続性リンパ球増多症となった牛は、免疫機能が低下するため、一見症状がなくても乳房炎など他の病気にかかりやすくなり、経済的損失の原因となります。
 肉用肥育牛でも、見た目は健康な牛が出荷後にと畜場で「牛伝染性リンパ腫」と診断され、
全廃棄になることもあり大きな経済的損失になることもあります。

 

〇治療法
 残念ながら、現在適切な治療法やワクチン等はありません。感染牛を確実に見つけ、隔離又は淘汰し、ウイルスが他の健康な牛に拡がるのを防ぐことが有効な防疫手段となります。

 

〇農場内で牛伝染性リンパ種が拡がらないためには?
1 定期的に血液検査を行い、感染している牛を見つける。
2 感染している牛と感染していない牛を分けて飼う。特に放牧地等の血を吸う虫が多い場所では、分けて飼うことを徹底する。
3 搾乳の時は感染していない牛から行い、その後感染している牛の搾乳を行う。
4 感染牛から産まれた子牛への対策を行う。
① 母牛が感染している場合、出生後すぐに、母牛と子牛をわける。
② 子牛に感染した母牛の乳を与えない。初乳製剤等を使用する。もし飲ませる場合は、60℃ 30分の加温処理又は完全に凍らせて、ウイルスの感染力をなくす。(凍結した乳を解凍する場合は、免疫成分を壊さないよう50℃以下の温湯を用いる。)
③ 子牛を農場に残す場合は、6か月齢以降に抗体を持っているかどうかの検査を行い、ウイルスに感染していないことを確認する。
5 注射針や直検手袋は1頭ごとに交換し、耳標パンチ、除角器、去勢器具、鼻環装着器は1頭ごとに洗浄・消毒する。
6 血を吸う虫(アブ・サシバエ等)の駆除や発生防止対策(牛舎周囲のネットの設置、アブトラップの設置、サシバエの休息場所になる牛舎周りの草刈り等)を行う。

 

〇最後に
 牛伝染性リンパ腫は全国で発生しており、治療法がなく、経済的損失が大きい病気です。各農場で完璧な予防策を行うのは難しいと思いますが、できる限りの予防策を実施し、感染牛を迅速に摘発し、ウイルスが拡がるのを防ぐことが牛伝染性リンパ腫の清浄化と被害の軽減に繋がっていくことになります。


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